変形性股関節症は整体で本当に改善する?効果の限界と治療法を解説
2026/08/04
変形性股関節症とはどのような病気か
変形性股関節症の概要
変形性股関節症とは、股関節の軟骨や骨、滑膜、関節包などに変化が生じ、痛みや動かしにくさが現れる病気です。
一般的には「軟骨がすり減る病気」と説明されますが、実際には軟骨だけでなく、関節全体に変化が起こります。
股関節は、骨盤側のくぼみである寛骨臼と、大腿骨の先端にある大腿骨頭によって構成されています。関節軟骨は骨の表面を覆い、股関節を滑らかに動かしたり、荷重による衝撃を分散したりする役割を持っています。
変形性股関節症が進行すると、関節裂隙の狭小化、骨棘の形成、骨の変形などが生じ、痛みや可動域制限につながることがあります。
ただし、画像上の変形の程度と痛みの強さは、必ずしも一致するわけではありません。
変形性股関節症の症状
変形性股関節症の主な症状は、股関節の痛みと機能障害です。
初期には、以下のような場面で脚の付け根に痛みや違和感を感じることがあります。
・椅子から立ち上がるとき
・歩き始めるとき
・階段を昇り降りするとき
・長時間歩いた後
・車や自転車に乗り降りするとき
・靴や靴下を履くとき
痛みは鼠径部に出ることが多いですが、以下の場所に感じることもあります。
・お尻
・太ももの前側
・太ももの外側
・膝周辺
股関節の病気であっても、膝の痛みとして自覚することがあるため注意が必要です。
進行すると現れやすい症状
症状が進行すると、以下のような変化が現れる場合があります。
・歩行時の痛みが強くなる
・歩ける距離が短くなる
・足を引きずるようになる
・股関節が動かしにくくなる
・足の爪を切りにくくなる
・靴下を履きにくくなる
・階段の昇り降りが難しくなる
・夜間にも痛みを感じる
・安静にしていても痛む
・左右の脚の長さが違うように感じる
進行した場合には、日常生活や仕事、外出、趣味などに大きな影響が出ることがあります。
ただし、変形性股関節症と診断されたすべての人が、必ず末期まで進行するわけではありません。
症状や進行速度には個人差があります。
発症の主な原因とリスク要因
変形性股関節症は、原因によって大きく一次性と二次性に分けられます。
一次性変形性股関節症
明らかな基礎疾患がなく、加齢などに伴って発症するものです。
二次性変形性股関節症
股関節の形態異常や過去の病気、外傷などを背景として発症するものです。
日本では、発育性股関節形成不全や寛骨臼形成不全など、股関節の受け皿が浅い状態を背景に発症するケースが多いとされています。
リスク要因としては、以下が挙げられます。
・発育性股関節形成不全
・寛骨臼形成不全
・股関節の外傷歴
・大腿骨頭壊死症
・化膿性股関節炎などの既往
・加齢
・女性
・過体重・肥満
・股関節への反復負荷
・筋力や身体機能の低下
姿勢の悪さだけが、変形性股関節症の直接的な原因になると断定することはできません。
日常生活への影響
変形性股関節症による痛みが続くと、動く機会が減りやすくなります。
活動量が低下すると、股関節周囲や下半身の筋力が落ち、さらに歩きにくくなる可能性があります。
日常生活では、以下のような場面に影響することがあります。
・長時間の歩行
・階段の昇り降り
・立ち仕事
・買い物
・靴や靴下の着脱
・入浴
・和式トイレ
・正座
・車の乗り降り
・家事や仕事
痛みや動作制限が続く場合は、早めに整形外科で状態を確認することが大切です。
整体で変形性股関節症は改善する?
整体で骨や軟骨の変形は治せない
変形性股関節症によって生じた骨や軟骨の構造的な変化を、整体の手技によって元の状態へ戻すことはできません。
以下のような説明には注意が必要です。
・骨盤を正しい位置に戻せば股関節症が治る
・骨のずれを矯正すれば軟骨が再生する
・整体だけで手術を回避できる
・股関節の変形を手技で治せる
・通い続ければ病気の進行を止められる
整体には、変形性股関節症を診断したり、X線検査を行ったり、薬を処方したりすることはできません。
まず整形外科で診断を受け、股関節の状態を確認することが重要です。
整体で相談できる可能性がある内容
医療機関で診断を受けたうえで、以下のような内容を整体で相談できる場合があります。
・股関節周辺の筋肉のこわばり
・腰やお尻の張り
・日常生活での姿勢
・立ち上がりや歩行時の動作
・体に負担をかけにくい動き方
・自宅で行う軽いストレッチ
・リラクゼーション
手技を受けた後に、筋肉の緊張が軽くなったり、体を動かしやすく感じたりする人はいます。
ただし、その効果には個人差があり、変形性股関節症そのものが改善したことを意味するわけではありません。
股関節周囲の筋肉へのアプローチ
変形性股関節症では、痛みや歩き方の変化により、股関節周囲の筋肉が緊張したり、筋力が低下したりすることがあります。
関係する筋肉には、以下があります。
・中殿筋
・大殿筋
・腸腰筋
・内転筋群
・大腿四頭筋
・ハムストリングス
これらの筋肉の緊張を軽減することで、動きやすく感じる場合があります。
ただし、筋肉が硬いことだけが痛みの原因とは限りません。
また、筋肉をほぐすだけでは、股関節を支える筋力を改善することはできません。症状に応じた運動療法を組み合わせることが重要です。
整体で痛みが軽くなる可能性
整体などの手技によって、短期的に痛みやこわばりが軽くなる人はいます。
考えられる理由としては、以下があります。
・筋肉の緊張が軽減する
・リラックスしやすくなる
・動作に対する不安が軽減する
・一時的に関節を動かしやすく感じる
・日常動作を見直すきっかけになる
一方で、整体によって以下の効果が得られると断定することはできません。
・関節を正しい位置に戻す
・血流を改善して軟骨を再生する
・骨盤のゆがみを治して病気を根治する
・変形の進行を確実に抑える
・人工股関節手術を必ず回避する
整体は、変形性股関節症に対する標準的な医療上の保存療法として確立されているわけではありません。
初期から中期なら整体が有効とは限らない
「初期や中期であれば整体が有効」「末期では整体が効かない」と一律に分けることはできません。
整体の利用が適しているかどうかは、画像上の進行段階だけではなく、以下を含めて判断する必要があります。
・痛みの強さ
・可動域
・筋力
・歩行能力
・日常生活への影響
・他の病気の有無
・施術に対する反応
初期であっても強い痛みがある人もいれば、画像上の変形が進んでいても痛みが比較的軽い人もいます。
医療機関で行われる治療
変形性股関節症の診断
整形外科では、問診や身体診察を行い、必要に応じて画像検査を実施します。
主な検査は以下の通りです。
・X線検査
・MRI検査
・CT検査
・血液検査
・関節可動域の測定
・歩行状態の確認
X線検査では、以下のような変化を確認します。
・関節裂隙の狭小化
・骨棘
・骨硬化
・骨嚢胞
・大腿骨頭や寛骨臼の変形
診断では、画像だけでなく、痛みや日常生活への影響も重要です。
保存療法
変形性股関節症の治療では、すぐに手術を行うとは限りません。
症状や進行度に応じて、まず保存療法が行われることがあります。
主な保存療法は以下の通りです。
・病気や治療に関する説明
・運動療法
・体重管理
・生活動作の見直し
・薬物療法
・杖などの歩行補助具
・理学療法
保存療法の目的は、痛みを軽減し、股関節の機能や日常生活を維持することです。
運動療法・理学療法
変形性股関節症では、症状に応じた運動療法が推奨されます。
運動療法では、以下を目指します。
・股関節周囲の筋力維持
・下半身の筋力強化
・関節可動域の維持
・歩行能力の改善
・日常動作の維持
・転倒リスクの軽減
取り入れられることがある運動には、以下があります。
・中殿筋の筋力トレーニング
・大殿筋の筋力トレーニング
・椅子からの立ち座り
・水中運動
・固定式自転車
・股関節周囲の軽いストレッチ
・痛みの少ない範囲での歩行
運動は、痛みや身体機能に合わせて調整する必要があります。
痛みを我慢して強く動かせば、早く改善するわけではありません。
体重管理
過体重や肥満がある場合は、体重管理によって股関節への負担を減らせる可能性があります。
ただし、体重を減らすことだけが治療ではありません。
無理な食事制限によって筋肉量が減ると、歩行能力や身体機能が低下する可能性があります。
必要に応じて、医師や管理栄養士に相談し、運動と食生活を組み合わせて取り組みましょう。
薬物療法
痛みがある場合は、症状や持病に応じて薬が処方されることがあります。
使用されることがある薬には、以下があります。
・アセトアミノフェン
・非ステロイド性抗炎症薬
・外用薬
・その他の鎮痛薬
薬には副作用や使用上の注意があります。
特に、胃腸障害、腎機能障害、心血管疾患などがある場合は、医師と相談することが重要です。
自己判断で長期間使用せず、処方内容に従いましょう。
股関節への注射
変形性股関節症の治療では、すぐに手術を行うとは限りません。
症状や進行度に応じて、まず保存療法
股関節内への注射が検討される場合があります。
ただし、注射の種類や適応は、医療機関や患者の状態によって異なります。
ヒアルロン酸注射については、膝関節では広く行われていますが、股関節への使用を一般的な標準治療として一律に推奨できるわけではありません。
股関節への注射を検討する場合は、期待できる効果、リスク、適応について整形外科医から説明を受けましょう。
手術療法
保存療法を続けても強い痛みがあり、日常生活への支障が大きい場合には手術が検討されます。
手術を検討する目安には、以下があります。
・強い痛みが続く
・夜間痛がある
・歩行が難しい
・靴下や靴を履けない
・仕事や家事が困難
・保存療法で十分な改善が得られない
・生活の質が大きく低下している
代表的な手術には、人工股関節全置換術があります。
年齢、骨の状態、変形の程度などによっては、骨切り術などが検討される場合もあります。
手術は画像上の変形だけで決めるものではありません。痛み、身体機能、生活への影響、本人の希望を含めて医師と相談します。
整体と理学療法・リハビリの違い
理学療法とは
理学療法は、医師の診断や指示のもとで、理学療法士が行う医療上のリハビリテーションです。
理学療法士は国家資格であり、以下のような評価や支援を行います。
・関節可動域の評価
・筋力の評価
・歩行の評価
・運動療法
・日常動作の練習
・杖の使い方の指導
・自宅で行う運動の提案
医療機関では、病気の診断や画像検査の結果を踏まえて運動内容を検討できます。
整体との違い
整体院では、主に民間の手技サービスが行われます。
「整体師」という名称自体は国家資格ではありません。
整体院で行われることがある内容は以下の通りです。
・筋肉への手技
・ストレッチ
・姿勢や動作に関する助言
・リラクゼーション
整体院では、変形性股関節症の診断、画像検査、薬の処方、手術適応の判断はできません。
病状や進行度を確認するためには、整形外科の受診が必要です。
整体と運動を組み合わせる場合
整体によって筋肉が一時的に動かしやすくなった後、無理のない範囲で運動を行う方法が合う人もいます。
ただし、整体を受けなければ運動療法の効果が得られないわけではありません。
また、整体を受けることで運動療法の効果が必ず高まるという根拠も確立されていません。
重要なのは、症状に合った運動を継続することです。
以下のような場合は、運動内容を医師や理学療法士に確認しましょう。
・運動すると痛みが強くなる
・痛みが翌日以降も大幅に増える
・歩き方が悪化する
・股関節が急に動かしにくくなった
・足に力が入りにくい
・転倒の不安がある
整体を受ける際の注意点
まず整形外科で診断を受ける
股関節の痛みには、変形性股関節症以外にもさまざまな原因があります。
・大腿骨頭壊死症
・関節リウマチ
・腰椎疾患
・股関節唇損傷
・大腿骨頸部骨折
・感染症
・腫瘍
・鼠径部周辺の筋肉や腱の障害
症状だけで変形性股関節症と判断することはできません。
股関節や鼠径部の痛みが続く場合は、整体を利用する前に整形外科を受診しましょう。
医療機関を優先すべき症状
以下の症状がある場合は、整体ではなく医療機関を優先してください。
・転倒後に股関節が痛む
・急に歩けなくなった
・足を着けないほど痛い
・安静時にも強く痛む
・夜間痛が強い
・発熱を伴う
・股関節が赤く腫れている
・原因不明の体重減少がある
・痛みが急速に悪化している
・足にしびれや筋力低下がある
高齢者では、軽い転倒でも大腿骨近位部骨折が起きる場合があります。
転倒後に痛みや歩行困難がある場合は、早めに受診してください。
強い矯正や痛みを伴う施術を避ける
変形性股関節症では、股関節を強くひねったり、無理に可動域を広げたりすると、痛みが悪化する場合があります。
避けたい施術には、以下があります。
・強い力で股関節をひねる
・痛みを我慢して関節を動かす
・反動を使ったストレッチ
・急激な関節矯正
・強い圧で長時間施術する
施術中に痛みが強くなった場合は、すぐに中止を申し出てください。
信頼できる整体院を選ぶポイント
整体院を選ぶ際は、以下を確認しましょう。
・医療機関の受診を妨げない
・骨や軟骨が治ると断定しない
・手術が不要になると保証しない
・画像診断の代わりになる説明をしない
・施術内容と料金を事前に説明する
・痛みがある場合に中止できる
・高額な回数券を強く勧めない
・施術者の資格を具体的に表示している
「整体師」は国家資格ではありません。
施術者が国家資格を持っている場合は、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士など、具体的な資格名を確認しましょう。
継続的な通院の必要性
変形性股関節症に対して、整体へ週何回、何ヶ月通うべきかという医学的な基準はありません。
「毎週通えば進行が止まる」「一定回数で骨盤が整う」といった説明には注意が必要です。
整体を継続する場合は、以下を確認しましょう。
・痛みが軽くなっているか
・歩きやすくなっているか
・日常生活が改善しているか
・施術後に痛みが悪化していないか
・自分で運動やセルフケアができているか
・費用に見合う変化があるか
効果を感じない場合や症状が悪化する場合は、惰性的に通い続けず、整形外科へ相談してください。
自宅で取り組める対策
股関節への負担を減らす
日常生活では、痛みを我慢して動き続けるのではなく、負担を調整することが大切です。
以下の工夫が役立つ場合があります。
・長時間歩き続けない
・適度に休憩を取る
・重い荷物を片側だけで持たない
・低すぎる椅子を避ける
・手すりを利用する
・痛みが強い日は活動量を調整する
・杖の使用を検討する
杖は通常、痛みのある脚と反対側の手で使用します。
使い方に不安がある場合は、理学療法士などに確認しましょう。
痛みの少ない運動を続ける
変形性股関節症では、痛みを恐れて全く動かなくなると、筋力や体力が低下する可能性があります。
体調に合わせ、無理のない範囲で運動を続けましょう。
取り入れやすい運動には、以下があります。
・水中歩行
・固定式自転車
・短時間のウォーキング
・椅子からの立ち座り
・横向きでの脚上げ
・仰向けでの臀部トレーニング
運動中に強い痛みが出る場合や、運動後に症状が大きく悪化する場合は中止してください。
ストレッチの注意点
股関節周囲の軽いストレッチによって、こわばりが楽になる場合があります。
ただし、関節を無理に広げたり、痛みを我慢して伸ばしたりする必要はありません。
以下の点を守りましょう。
・反動を使わない
・痛みのない範囲で行う
・呼吸を止めない
・股関節を強くひねらない
・深くしゃがみ込みすぎない
可動域を無理に広げることが、関節症の改善につながるとは限りません。
体重管理と栄養
過体重や肥満がある場合、無理のない体重管理が症状の軽減に役立つ可能性があります。
ただし、極端な食事制限は避けましょう。
筋肉を維持するためには、以下を意識することが大切です。
・適量のたんぱく質
・野菜や果物
・カルシウム
・ビタミンD
・適切な水分摂取
特定の食品だけで軟骨が再生したり、変形性股関節症が治ったりすることはありません。
まとめ
変形性股関節症は、股関節の軟骨や骨、周辺組織に変化が生じ、痛みや動かしにくさが現れる病気です。
整体によって、骨や軟骨の変形を元に戻したり、病気を根本的に治療したりすることはできません。
一方で、医療機関で診断を受けたうえで、股関節周囲の筋肉のこわばり、姿勢、日常動作、セルフケアについて相談する補助的な選択肢になる場合があります。
変形性股関節症の中心的な保存療法は、運動療法、必要に応じた体重管理、生活動作の見直し、薬物療法などです。
痛みが強い場合や日常生活への支障が大きい場合は、整体だけで対処せず、整形外科で治療方針を相談しましょう。
転倒後に歩けない、安静時にも強く痛む、発熱がある、痛みが急速に悪化している場合は、速やかに医療機関を受診してください。
参考文献・出典一覧
【学会・公的機関・専門組織】
・日本整形外科学会「変形性股関節症」
・日本整形外科学会「変形性関節症」
・Mindsガイドラインライブラリ「変形性股関節症診療ガイドライン2016」
・American Academy of Orthopaedic Surgeons「Management of Osteoarthritis of the Hip」
・American Academy of Orthopaedic Surgeons「Osteoarthritis of the Hip」
・NICE「Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management」
・World Health Organization「Osteoarthritis」
【主要ガイドライン】
・日本整形外科学会・日本股関節学会 監修『変形性股関節症診療ガイドライン2016 改訂第2版』
・American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Osteoarthritis of the Hip: Evidence-Based Clinical Practice Guideline.
・NICE Guideline NG226「Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management」
【記事作成方針】
本記事は2026年8月時点の公的機関、医学ガイドライン、専門組織の情報を参考に作成しています。
変形性股関節症は、股関節の軟骨だけでなく、骨や滑膜、関節包などを含む関節全体に変化が起こる疾患です。
整体は、変形性股関節症を医学的に診断・治療するものではありません。また、骨や軟骨の変形を元に戻したり、進行を確実に止めたりする効果は確立されていません。
医療機関で診断を受けたうえで、筋肉のこわばり、姿勢、日常動作、セルフケアについて相談する補助的な選択肢として検討してください。
変形性股関節症の保存療法では、運動療法、必要に応じた体重管理、薬物療法、歩行補助具などが用いられます。
転倒後の強い痛み、歩行困難、安静時痛、夜間痛、発熱、急速な症状悪化などがある場合は、自己判断で整体を利用せず、速やかに整形外科を受診してください。


